広葉樹の森・探索会報告
- <日時>
- 5月21日(日)
- <場所>
- 京大芦生演習林
- <報告>
- 津田佳恵
前日までぐずついた天候はどこへやら、探索会当日は朝から晴 天でみごとな青空が広がっていました。
演習林入り口の少し手前で停車。徒歩で林に向かい原生林へ向けスタートしました。気温はそれなりに上がっているはずで すが、木々に囲まれているせいかさほどの暑さも感じず、足取りも軽やか。途中、案内人の服部さんから樹木の説明を受けつ つ、歩を進めます。
製材されたものしか見たことがなっかた私は、幹を観ただけではなかなか区別がつきませんでした。だけどしばらく歩きなが ら葉を見ていると少しずつ分かるようになっていました。原生林では高くそびえ立つ木々が視野いっぱいに広がります。風になびいてこすれ合う葉の囁きが包み、その合間から青空と柔らかな緑陽がこぼれて、幻想的な雰囲気でした。
少し歩いた所にある広場で昼食。ここばかりは木陰がなく、強い日射しを浴びながらのランチタイムでした。服部さんから今回の探索会の趣旨について説明され、ポイントは”とにかく一つでも木の種類を覚えること”。参加者全員で記念撮影した後、先へ進みました。
ルートは、由良川沿いを上流に向かって登っていくもの。さらさらと流れる小川のせせらぎを耳にしながらの軽登山です 。山道は斜面に面して時に狭く、小川をたびたび交差していて、私達女性陣はうまく渡ることが出来ず、水の流れに悪戦苦闘でした。
途中、森がひらける場所がいくつかあり、そこには森を見守り続ける巨木が雄々しく、そして優しげに佇立していました。たくましく伸びる幹に一同嘆息。中には根元に人一人入れる程の穴が空いているものがあり、腐っているのかと思いきや、上を見上げると細い枝からは、新しい葉を沢山つけていて、木の生命力の凄さを思い知らされました。
そんな中で服部さんによるレクチャーです。家具の材料として利用可能か、あるいはどれほどの木材が採取出来るのかという話題にも及びましたが、利用価値は実は低かったり採取出来る量はわずかだったりと、その内容は意外なもの。言い換えれば採取出来るわずかな材料のために、長年生き続けた巨木を切り倒してしまうことにもつなわるわけで、服部さんの「木工家は自然に優しい存在とは言い切れず、逆に破壊者としての側面を持っている」という言葉が心にずしりと響きました。
さらに川沿いの山道を進むと、由良川の源流地点、そして標高765mの杉尾峠に到着しました。峠から望む景色は私達が今いる原生林ではなく、杉の植林された山々。普段であれば綺麗な景色だなーとのんきに眺めているところですが、杉が整然と植えられた山の姿は味気なく、そしてどこか弱々しく…。現在の日本の山林の有り様を垣間見る思いでした。
帰り道、疲労で重くなった足取りが続き陳列も延びきっていました。そんな帰り道は終え、今度はお楽しみの朽木温泉へ。汗まみれ、泥まみれ、すっかりお疲れの体を温泉に沈めれば、気持ちもほっこり。
最後に服部さんからご挨拶と木工会の紹介をしていただき、散会しました。一日では学びきれない林の奥深さ。木を扱う者としてますます勉強していかなければ、と思いを新たにした充実の探索会でした。
文責・津田佳恵