浜田工房サマースクール ’08を終えて
参加希望者が多数であったため、8月16〜17日と、23〜24日の2回にわたり行われた今年の浜田工房サマースクール。
その参加者の宮本良平さんにレーポートを書いていただきました。
** 2008年浜田工房サマースクールレポート **
蒸し暑い名古屋を出て米原の浜田工房に着くと、各地からメンバーが到着してい
て、皆「涼しいなあ」。名古屋から一時間ほどなのに、気候の違いに驚く。これ
なら快適なサマーセミナーになりそうだ。
今回のサマーセミナー、内容はテンコ盛だ。計画では、北欧の椅子についての授
業から始まって、罫引き、豆鉋、南京鉋、面落としジグを作り、刃物研磨や砥石
の切断、鉋の口埋め、刃物の焼きいれなど、正直「消化しきれなのではないか」
と思うほどの内容である。
◆北欧の椅子について◆
フィンユールの椅子や、Yチェア、ピーコックチェアなどの図面を見ながら、浜
田先生からお話を聞く。こういう話は深いところまで知っていないとできるもの
ではない。有名な学校の先生達の話は聞いたり読んだりしたことがあるが、作り
手からの経験に裏づけされた話を聞くことはほとんどなかった。デンマークの家
具は、デザイナーと技術者のすばらしい連携によってレベルの高いものになった
と聞いたことがあるが、そのノウハウみたいな部分を少し知ることができたかも。
◆道具・ジグの製作◆
罫引き
浜田流罫引きは実践的だ。ネジは鬼目ナットを使い、押さえの金属板にはアルミ
のチャンネル、そして、刃は生の鋼をグラインダで成型後、バーナーで赤く焼い
て水につけ、焼入れをする。「焼きいれ」と聞くと大袈裟に感じるが、それを簡
単なバーナーだけであっと言う間にやってしまうところが流石。
豆鉋
ピーコックチェアの5分の1モデルを作る際、背のスピンドルを削りだす時に使っ
たのが、半径1mmほどの内丸の自作豆鉋だという。それと同じようなのを作っ
た。刃は横から溝にはめ込み、小さな真鍮板と極小ネジで押さえる構造。細い丸
ヤスリで内丸の台と鉋の刃を成型。その後焼きいれをし、研ぎは自宅で。なお、
砥石はダイヤ刃をつけた糸鋸で切るのだそうだ。
伝統的な豆鉋の製作はウチの教室でもやっているが、横入れ方式は作るのが簡
単で実際的。特に小さな刃には適していると思った。
南京鉋
ウチの教室でも人気の南京鉋。松本民藝の故「東さん」が製作していたのを、生
前松本クラフトフェアで買った、それを手本にしている。今回は真鍮板の掘りこ
みをルーターと移動テーブルで行うなど、浜田流製作方法が面白い。やっぱり難
しいのは押さえ溝堀だろう。各自、回し引き鋸、金属用鋸、畦引き鋸など、いろ
いろためしてみたらどうだろうか。
面落とし治具
江戸指で言う「腰押」である。普通職人は足で押さえてこれを使うが、普通の人
は動いてしまうので、クランプで押さえたりする。それを両方から挟み込む構造
にすることで誰でも確実に使えるよう工夫されたもの。ネジの使い方が面白い。
ヘリサートと呼ばれる、軟材に確実に雌ネジを挿入できる装置とネジを使うのが
ミソだと思う。直径6mmと8mmを持っていれば、いろんなジグ製作等に応用
が利くと思った。
◆その他◆
チップソウ研磨
マキタのチップソウ研磨機を見ながら講義を聴く。浜田先生のこれを見てから、
ウチも買って使っている。研磨屋さんへ「指定の角度でお願い!」と念を押して
手渡ししても、研磨屋さんが勝手な角度で研いでくることが何度かあって嫌になっ
た。結局は自分でやるしかないというのが実状かと思う。カネフサなど製造元に
直接送る方法もあるらしいが、電話で問い合わせたところ、歓迎されないムード
であった。
鉋の口埋め
詳細な図面をいただいて説明を聞く。私も浜田流で何度もやっているけど、満足
できる仕上がりになることは少ない。結構難しい。こういうのは数をこなすしか
ないか・・・。
宿泊・宴会
近くの温泉で入浴後、浜田先生の奥様の手料理に舌鼓を打ちつつ、夜11時ごろ
まで宴会。夏の疲れか、私はだんだん眠たくなってしまった。後で浜田先生の椅
子の模型等の展示を見て、12時頃には浜田亭の二階で寝袋に入る。それで充分
に寝る事ができる、米原の夏が羨ましかった。翌朝は朝食をいただいた後、近く
の名水で身体を清め、2日目セミナーに向った。
以上、ごく簡単にレポートしましたが、実に内容の濃いサマーセミナーでした。
それでも、浜田先生の教材や資料の準備が完璧であったことから、それほどタイ
トではなく、楽しく過ごさせていただきました。また、ご自宅を開放されての宿
泊や食事等、奥様にも頭が下がる思いです。私のような木工教室を自営している
者にも、気さくに教えていただき、いつも感謝しています。また来年のサマーセ
ミナーがあれば、楽しみも兼ねて参加したいと思っています。ありがとうござい
ました。
以上宮本さんのレポート
また、参加者のブログからもセミナーの様子が伺えます。